宇佐美くんの口封じ
“何もない”と断言できるほど、私と宇佐美くんの距離は遠くない。
かと言って身体の関係はもっていないし、告白をされたわけでもない。
自分の気持ちを確信してしまう前に、
麻央さんの涙に隠れて、
必死に言い訳を探して、
宇佐美くんに“教えて“もらう前に。
彼に染まってしまうことが怖くて、私は逃げたんだ。
もうこれ以上宇佐美くんとはいられない。
宇佐美くんのことを考えて悩むことも悲しむことも、もうしないって決めたのだ。
「…何もないよ、本当に」
「そっかー。あーあ、もう一回くらい遊んでほしかったなぁ」
「はは…」
サラに苦笑いを返すと、「てかさ」と彼女はまた別の話題を持ち掛けてきた。
玲が何も言わず私のことを見ていたことに、私が気づくことはなかった。