宇佐美くんの口封じ








あれから何日が経っただろう。
文化祭は10日後に迫っていて、おばけ屋敷の準備も7割ほど終わったように感じる。



「雅。仕事、もらってきた」

「え、リコが働いてる…」

「失礼ね」



3日間の集中準備期間に入る前の、最後のロングホームルームの時間。
リコは右手にひらひらとメモをなびかせて私に言う。



「また荷物取りに行ってこいってよ」

「私らってこれしか仕事与えられないよね」

「ほんとよね。こっちも暇じゃないっての」



いや暇だろ、と突っ込みたくなる気持ちを抑え美術室に向かう。



…どうか、会いませんように。



通り道で避けられない2年生の廊下。

他愛のない会話をするリコに適当な相槌を打ちながら、心の中でそんなことを思う。




「…、!」



しかし、どうも私はタイミングと運が悪い生き物らしい。

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