宇佐美くんの口封じ





宇佐美くんの真剣な眼差しに捕らわれる。


確かに今日は部活は定休日だ。
放課後の予定は何もないから、時間ならいくらでもある。


何を話すつもりなのだろう。
気になったけれど、今ここで聞いたところできっと彼は答えてはくれない。



「…わかった」


そういうと、宇佐美くんは小さく笑みをこぼした。




「リコさんいい加減連絡教えてくださいってー」

「やだっての!しつこい男は嫌いなのよ!」

「えーひどい、連絡先なんて減るもんじゃねえのに」

「あんたに教えたら毎日通知うるさそうだもん!…雅!早く行こ!?」




私と宇佐美くんがしていた会話なんてきっと1ミリも聞いていなかったであろうリコに腕を引っ張られる。


忘れていたけれど、私たちはこれから美術室に道具を取りに行かなくちゃいけないのだ。

「リコさんリコさん」と騒がしい倉野くんと、そんな彼を見てため息をつく宇佐美くんにぺこっと頭を下げる。




「せんぱい、またあとで」



リコに引っ張られながら、私の頭では宇佐美くんのその声がリピートされていた。



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