宇佐美くんの口封じ





…どうしようかな。

また自分の教室に戻ってもどっちみち返信がくるまで暇をつぶさなければならないし───…あ、そうだ。



ふと、ちょうどよい暇つぶしを思い出した私は、同じ階の音楽室へ足を運んだ。



今日は部活がないから、多分人はいない。
文化祭も近いし、自分のパートを練習して待っていよう。



音楽室の扉は相変わらず空いていて、中には見た限り誰の姿も見えなかった。
念のため準備室の扉をノックし、物音がしないことを確認して開ける。




部活の有無にかかわらず、準備室にはいくつか楽器が置いてある。


普段使うギターは自分のクラスのロッカーに入れたり、家に持ち帰ったり個人の自由になっている。
私も教室に戻れば自分のギターがあるけれど、たった数分の暇つぶしなら音楽室のものでも支障はない。



ギターを一つ取り出し、音楽室の隅にある椅子に座った。




次の文化祭でコピーする曲の中に、最近人気がでている女性バンドの片想いソングがある。

ギターが意外と難しくて、実はかなり手こずっているのだ。

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