宇佐美くんの口封じ
誰もいない音楽室でひとり、ギターを弾く。
宇佐美くんからの連絡はまだ来ない。
職員室に呼び出されたりとかしてそうだな、と他人事のように考える。
だれもいないことを言いことに、私は少しだけ声を出すことにした。
ひとりで弾き語りって、なかなか寂しいけど良いものだなぁ…なんてそんなことを考えては儚い歌詞を口ずさんだ時。
「───雅さん?」
入り口からそんな声が聞こえた。
視線を動かせばそこには玲の姿があって、彼は「なにしてるんですか?」なんて言って私の方に歩いてくる。
「雅さんって歌うんですね」
「…恥ずかしい」
「なんか聞こえてきたから覗いてみたらいたから。隣、いいですか?」
そういう玲に頷いて、私は演奏を止める。
「どうしたんですか?一人で自主練?」
玲が不思議そうに尋ねてくる。首を横に振り、「暇つぶしてた」と答えると、玲は首を傾げた。
「…宇佐美くんのこと待ってる」