宇佐美くんの口封じ
宇佐美くんとの間にあった“異常”を、私は全部なかったことにしようと決めていた。
何を言われても、彼とはそれ以上でも下でもない関係に戻る、と。
あの日に感じた気持ちは錯覚だったのだと、と。
だから今日で、宇佐美くんと挨拶以外の言葉を交わすことはなくなるということを伝えようと思っていたんだ。
玲ももともとそうした方がいいって言ってたし、きっと「良いと思います」とか言うんだろうな…って。
「…雅さん」
「ん?」
「…なんか、見てて痛々しい」
そう思っていた私に降りかかったのは、玲のそんな言葉だった。
「雅さん…そうやっていつも自分のこと殺してません?」
「え、?」
「なんか無理やり言い聞かせてる感じ。…見てて痛々しいです」
玲は大きくため息をつくと、くしゃくしゃと襟足を掻く。
「気づいてるんじゃないんですか?」
「…何に、」
「宇佐美のことですよ。そうやって言い訳して、あいつとの間に勝手に線引いてる気がします」