宇佐美くんの口封じ
恋だと信じたくなかった。
私は誰にでも優しい“みんなの宇佐美くん”なんて嫌いだ。
優しくされたからってそんなに簡単に好きになるもんか。
そう言い聞かせていたのに、気づけば私はまんまと彼にはまって抜け出せなくなっていた。
“みんなの宇佐美くん”じゃなくて、もしかしたらこれは“私だけが知っている宇佐美くん”なのかもしれない、とうぬぼれるようになった。
そんな自分が嫌で、怖くて、…距離をとったんだ。
だけどもう限界らしい。
「泣くのまだ早いですよ。告白してもないのに」
「ん、うん…そうなんだよね…っ、わかってる」
私を落ち着かせるように、玲が身体を包み込み、トントンと優しく背中を叩く。
宇佐美くんの甘い香りじゃなくて、玲の柔軟剤の香りがする。
年下なのにお兄ちゃんみたいで、本当に助けられっぱなしで情けない。