宇佐美くんの口封じ





「あ、雨宮せんぱい」

「おはよう」

「おはようございまーす」




廊下で会ったら、"一応同じ部活で顔見知りだし"ってそんな理由で挨拶を交わすような関係。



肩より少し長いくらいの黒髪に、揃えられた前髪。顔の作りも普通。

綺麗系か可愛い系かで言ったら圧倒的後者だろう。体型は平均よりは幾分か細いけれど、そのせいもあってか見る限り欲情する身体付きでもなかった。


特別激しい人見知りもしなければ、誰ふり構わず話しかけるオープンな性格でもない。



俺からすると───いや、誰からしても、彼女は"普通"が良く似合う女の子だった。


真面目そうだし、俺が遊んでるって知ったらめちゃくちゃ嫌ってきそう。3年くらい付き合ってる彼氏とかいそう。想像だけど。



多分、俺と雨宮せんぱいが触れ合うことなんてないんだろうな。




そんな彼女へのイメージに変化が訪れたのは、本当に突然の事だった。



< 165 / 234 >

この作品をシェア

pagetop