宇佐美くんの口封じ
小さい時からずっと両親が共働きで、常に忙しそうにしていたから、俺は良い子でいなくちゃって思っていた。
わがままは言わない。
なるべく迷惑をかけないように。
だけど時々1人で留守番するのが寂しくなって、小学生の俺が歩いていくには少し遠いばあちゃんの家に遊びに行くようにしていた。
ばあちゃん家に行くと、温かいココアを出してくれるし、甘いお菓子をたくさん出してくれるし、帰りはじいちゃんが家まで送ってくれる。
小学生の俺の寂しい気持ちを埋めてくれる大切な場所だった。
中学校に上がると同時に、俺は生まれ持ったこの顔を自分で利用するようになった。
外見だけを見て好きだという女の子たちがうじゃうじゃと現れた。
バレンタインには大量のチョコレートを貰うようになった。
「家に帰りたくないんだよねー」とぼやけば、日が暮れるまで話し相手になってくれる子が腐るほどいた。
全然どの子もピンとくるタイプの子ではなかったけど、誰も俺を1人にはしなかった。
寂しさを埋めてくれる人には平等に優しくしよう。
いつしか、俺はそんなことを考えるようになった。