宇佐美くんの口封じ





ファーストキスを奪われたことくらい他の子からしたらどうってことないのかもしれないけど、私にとっては一大事。

せめて好きな人としたかったという後悔が襲う。




リコに言ったら「まだキスもしてなかったの?」と言われそうだ。

たしかに、"普通"で考えたら高校3年生でキスのひとつも済んでいないなんて遅れてるのかもしれないけど。



私はピュアなんだ。

だからあんな『口封じ』なんかで奪われたのが、後になって悔しくて仕方がなかった。




「本当にそれだけ?」

「え、う、うん…」



本当は全然違うことが言いたかったんだけど、とその言葉を飲み込んで、私は席に着く。





今日の部活、いつも通りの顔できるかな。

いや、しなきゃいけないんだけど。

サラはどんな顔して私に会ってくれるんだろう。



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