宇佐美くんの口封じ




「…、わかった」

「…ありがとうございます」

「い、いいえ…?」




静かな保健室に、私と宇佐美くんの呼吸音だけが聴こえる。


…この、なんとも言えないもどかしい空気はどうしたらいいんだろう。

こういう時、リコだったらどうしてるだろう。
ていうかリコ、まだ倉野くんといるのかな。


私のバンドの出番はお昼すぎにある。
リハーサルがもうすぐ始まる時間かもしれない。


でもなんか名残惜しくて去りたくないというか…うぅ…っ、どうしたらいんだ、この気持ちは。






「せんぱい」

「はいっ!?」

「え、そんなビビんないでくださいよ」




関係の無いことを思い出しては表しきれない気持ちに駆られる私を宇佐美くんが呼ぶ。
ビクッと肩を揺らして返事をすれば、彼は柔らかく笑う。


……この顔が、私は好きなんだよなぁ、とふと思う。

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