宇佐美くんの口封じ
体育館に着くと、中は演出のため証明は控えめになっていて、宇佐美くんを見に来たであろう女の子たちであふれていた。
「うわ、人多いな…さすがと言いますか」
「…軽音部の女子はみんな来てると思う、間違いなく」
「…こわ。そんな“みんなの宇佐美くん”の好きな人が雅だって知ったらもっと怖いわ。雅さんって呼んだ方いい?」
「うん、やめてくれる?」
そんなやり取りをしながら、体育館の奥に向かう。
ど真ん中で見なくていい。
宇佐美くんが私を見つけられなくたっていいんだ。
私は、宇佐美くんが奏でる音が聴きたいだけなのだ。
「そんな奥でいいの?前の方空いてるよ?」
「う、うん」
「雅がいいならあたしはどこでもいいけどさぁ…せっかくなのに」
「そうですよぉ!雨宮せんぱいの顔見えた方が依里も輝くだろうし!」
「いや、私は───って、…え?」