宇佐美くんの口封じ
大きく肩を揺らして振り向くと、そこには相変わらず笑顔を浮かべた宇佐美くんがいた。
なんてこった。また見つかってしまったじゃないか。
私が隠れるのが下手すぎるのかな。
…いや、それとも運が悪いだけとか。
「また覗きですか?本当趣味どうかしてますね」
「ちっ、違います!断じて!」
「じゃあ俺に会いたくなったとか?」
ドキ、と早くなる鼓動。ぎゅっと胸に手を当てて呼吸を整える。
動揺しちゃダメ。
絶対この人私の事舐めてるもん。
私は音楽室に行きたかっただけ。
「…ったまたま通りかかったら宇佐美くんが居ただけ!また邪魔してごめんね!」
「…ふーん?」
これ以上彼にバカにされないように、なるべくいつものトーンで言い返す。
「大体、宇佐美くんが悪いんでしょ?…誰が通るか分からないとこでキ、キ、…キスなんてしてるから!」
「やっぱ覗いてたんじゃないですかー」
「だからそれはたまたま…っ!宇佐美くん、誰にでもああいうことしてるんでしょ」