宇佐美くんの口封じ
「雅さん、…お迎え来てます」
「…へ?」
玲の視線の先につられるようにして振り向く。
「───せんぱい、」
そこにいた彼の姿を見ただけで───私の視界も思考も全部、一瞬にして彼で埋め尽くされてしまう。
「…玲、せんぱいのこと借りてもいい?」
「…好きなだけどーぞ」
「…さんきゅ」
宇佐美くんが玲とそんな会話を交わした後、もう一度「せんぱい」と私を呼んだ。
「行きますよ」
そう言って引かれた手。
一瞬にして宇佐美くんの体温に包まれる。
玲に小さく頭を下げて、私は引かれるままに彼の後に続いた。