宇佐美くんの口封じ
「…せんぱいって歌うんですね」
ふと、宇佐美くんが塀に腕を乗せながらそう言った。
なんの事かと思ったけれど、すぐにさっきのライブのことだと分かった。
「…成功させたかったから。サラの声が枯れちゃって、…だけどあのまま終わったら絶対後悔すると思って」
「…なんか、すげーかっこよかったです」
玲にも言われた言葉。
私はちゃんと歌えていただろうか。
声が震えて、ギターを弾くでも震えて、観客の目が怖くて。
それでも歌い切れたのは、メンバーの支えと───
「…宇佐美くんが居たからだよ」