宇佐美くんの口封じ
なんで私はこんなことを言っているんだっけ。
宇佐美くんに簡単に唇を奪われたことが悔しくて、
このまま、他の女の子と同じように宇佐美くんに流されるのが嫌だった。
私はそんなに軽い女じゃない。
キスも、その先も、好きな人としてこその幸せが欲しいから。
宇佐美くんの"普通"は、私にとっての"異常"だ。
「…この間のことは絶対誰にも言わない。この間のキスもカウントしない。…その、…だから、」
だから一昨日までの、"すれ違って挨拶をするだけの後輩"に戻って欲しいんだ。
深くならないうちに身を引いておかないと、私は宇佐美くんを意識してしまう。
私は"ウブ"だから…いつかきっと、好きになってしまう。
「雨宮せんぱい、」
───なのに、宇佐美くんは。
「そんな寂しいこと言わないでくださいよ」
「…う、」
「それに俺、せんぱいのこと結構気に入っちゃったし」