宇佐美くんの口封じ





宇佐美くんの手が私の髪の毛に触れる。それをそっと耳に掛け、彼は少しだけ口角を上げた。




「せんぱいみたいな人、今までいたこと無いから興味湧いちゃってー」

「ちょ、っ話聞いてた?」

「俺、寂しがり屋なんですよ。満たしてくれる人がいないと生きてけない」




近い。距離が近い。




「せんぱいが俺の事満たしてくれるなら、他の子全部切ってもいいですけど」

「っはぁ?」





なんかこれ、デジャブだ。

昨日と全く同じことが起きようとしている。
意地でも唇だけは守らねば……!


両手で口を覆うと、宇佐美くんは一瞬動きを止めて「…はい?」と声をこぼす。




「…宇佐美くんとそういうことは、もう絶対しないから!」

「…へえ」

「別に宇佐美くんに変わって欲しいなんて思ってないし!…私の日常を乱さないで下さいって言いたいだけなので!」





よし、言い切った!

口を抑えてたから声が少し籠っちゃったけど、ちゃんと言いたいことは言えた!
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