宇佐美くんの口封じ
───って、他人事のように考える毎日だったからこそ、他人事ではなくなってしまったこの状況は夢なのだと信じたかったのだ。
「ねぇせんぱい」
「っち、近いです宇佐美くん…っ」
ふわり、宇佐美くんの香りがした。
…いい匂いだなぁ。
このままでは鼻と鼻がくっついてしまいそう。
こんなに至近距離で私の平凡オブ平凡の顔面が見られていると思うと消えてしまいたくなる。
ああ、どうしてこんなことになったんだ。
思い返せば、私が音楽室に忘れ物なんてしたのがいけなかった。