宇佐美くんの口封じ
「ごめん2人ともっ」
「…すいません、」
顔の前でパンっと手を合わせて謝るのはベースの遥馬。
週に1回は必ず課題を出さないせいで居残りさせられている問題児。
その後ろで小さく頭を下げたのは、ひとつ年下でドラム担当の玲。
玲は遥馬の幼なじみで、遥馬の勧誘によって1年遅れで私たちのバンドに加入したのだ。
「職員室に課題出しに行ったらさ、ちょうど玲も日誌出しに来てて。それで一緒に来た!」
「いいかげん課題の提出期限守りなさいよ」
「…ベースの練習してたらやる暇なかったんだもん…」
「可愛く言ってもダメ。次やったら練習参加させないから」
サラがずばりと言い放つ。「サラがいじめる…!」なんて行って玲に縋る遥馬は、「お前が悪いだろ」と一蹴されていた。
全員が揃ったところでようやく活動開始。
音楽室を使えるのは週に2回。それ以外の日は部室や屋上をグループごとに割り振られている。
音楽室が1番環境が整っているから、週に2回の音楽室が使える日は特に練習のしがいがあるのだ。
音楽をしている時が、私は1番生き生きしていると思う。