宇佐美くんの口封じ
声がした方に視線を向けると、そこにはいかにも“陽キャ”な男の子が3人と女の子が1人いた。
手にはポップコーンやら飲み物を持っていて、どうやらこれから映画を見るのだということはすぐに分かった。
これがパリピ…?などと他人事にそんなことを思っていると、宇佐美くんがパッと握っていた手を離した。
伝っていた彼の温度が空気に溶けていく。
それが少しだけ…寂しい、と、思ってしまったなんて。
「依里、久しぶりっ!全然会ってくれないから寂しかったぁ」
「つか珍しいじゃん、依里が外で女と遊んでるなんて」
へらへらと笑って近づいてくる宇佐美くんの友達。
「寂しかったぁ」と言った女の子と目が合って、フッと鼻で笑われた。
…うわ、なんかすごい嫌な感じだな。
「え、もしかして彼女とか?あのプレイボーイの依里が?」
「まさかぁ。依里はみんなの依里だもん、彼女なんてつくらないよね?」
女の子が前に出てきて宇佐美くんに問いかける。
そんな友達さんに、宇佐美くんは小さく舌打ちをした。