宇佐美くんの口封じ
「…雅さんがそういうならいいですけど…なんかされたらすぐ言ってくださいね?」
「うん。心配してくれてありがとう」
玲はあきれたようにため息をつくも、そう言って小さく笑った。
やっぱり玲はお兄ちゃんみたいだ。
私よりずっとしっかりしている。
「あっ、日誌…!」
話に夢中ですっかり忘れていた。日誌はまだ全然書き終わっていない。
「今日、無しにしちゃいましょうか」
「えっ!でも…」
「サラさんは来ないし、遥馬もどうせまだ終わらないだろうし」
「雅さんも日誌あるしね」と言う玲は少しだけ悪い顔をしていた。
たしかに、何時に練習を始められるかわからない。玲だけに待たせるわけにもいかないし、…そうしたほうが賢明かもしれない。
「遥馬には俺から言っておくので。日誌がんばってくださいね」
そう言い残し、玲が教室を出ていく。
残された私は、開けた窓の外から聞こえる運動部の声をBGMに日誌を書いた。