宇佐美くんの口封じ
「…宇佐美くん…?」
ベンチに横になり目を閉じていたのは宇佐美くんだった。
普通なら部活をしている時間なんだけどな。
そう思いながら小さく彼の名前を呼ぶ。
しかし、彼はすっかり眠っているようでピクリとも反応しなかった。
私はベンチのすぐそばにしゃがみ込んだ。
…綺麗な寝顔だな…。
彼の寝顔を眺めながら、この間のことを思いだす。
優しくなでられた頭。
優しく繋がれた手。
あれから何日かたった今でも、あの日の温もりが忘れられなかった。
宇佐美くんが私のことをどう思っているのかわからない。
感じたことのないもやもやはなんなんだろう。
そんなことを考えているうちに、私は無意識で眠っている彼の髪にそっと触れてしまった。
さらさらの髪に手を滑らせる。
宇佐美くんは、いつ私に飽きてしまうのだろう。
いつまで私は、“仲の良い先輩”として彼と一緒にいられるのだろう。