宇佐美くんの口封じ





映画館で会った宇佐美くんの友達は、彼のことを「依里」と呼んでいた。
下の名前を呼んでも違和感がないのは、仲が良いからだろう。



宇佐美くんに飽きられてしまう前に、私も彼を呼び捨てにできるくらい仲良くなれるだろうか。


いつか来てしまう終わりを想像して、少しだけ寂しくなった。






「……依里、くん」






ぽつり。試しに名前を呼んでみる。


素敵な名前だと純粋に思った。


宇佐美 依里。

バランスの取れた、かっこいい彼にぴったりな名前だ。



……って。何してるんだ私。


寝ている後輩の頭をなでながら慣れ慣れしく下の名前で呼ぶなんて、私ごときがしていいわけがない。

急に恥ずかしくなった私は、彼に触れていた手を離そうとした。








「───…雅せんぱい、」




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