宇佐美くんの口封じ
そんな時だった。彼が私の名前を呼び、ゆっくりと目を開けてにぃっと口角を上げたのは。
「…っ、え、」
「せんぱい相変わらずいい趣味してますねー」
「う、うさ、…お、起きて…」
「ドアの音で気づいてましたけどね。せんぱいの声がしたから、寝たふりでもしてみようかと」
「よいしょー」なんて気の抜けた声とともに体を起こした宇佐美くんが、トントンとベンチを叩いて隣に座るように誘導する。
私は動揺を隠せないまま、流されるように彼の隣に座った。
彼は最初から寝ていなかったらしい。
私の反応を楽しむためにずっと寝たふりをしていてと聞き、恥ずかしくて消えてしまいたいとすら思った。
「頭なんか撫でちゃってさ。せんぱい、もしかして俺に会いたくて仕方なかった?」