宇佐美くんの口封じ
私の顔を覗き込むようにそういう宇佐美くん。
「かわいいですね」と小さく笑う彼に、一気に顔の温度が上がる。
心臓が爆発しそうだ。
時を戻して数分前の私をなかったことにしたい。
「っそれより!宇佐美くん部活じゃないの !」
赤い顔をなるべく見られないように目を逸らしながら必死に話題を変えると、「あ、話かえたー」と、また余裕そうに笑う。
「今日は皆予定があったから俺のバンドは休みです。もともと決まってた」
「…ふ、ふーん。そうなんだ!」
「せんぱいも休み?」
「そっ、そうだよ!休み!ここに来たのだってたまたま!」
恥ずかしい、消えたい。
今の私が考えていることはそれだけだった。
名前なんて呼ぶんじゃなかった。
どうして頭なんて撫でちゃったんだ。
どうかしていたのか、私は。