宇佐美くんの口封じ
彼は満足そうに笑うと、またひとつ「可愛い」と言葉を零した。
…だから可愛くなんてないんだってば。
「俺、最近悩んでることがあって」
「…悩み事?」
「そう。ちょっと考えたくなったから人が来ない屋上に来たんです。でもなんか、せんぱいの顔見たらどうでもよくなっちゃった」
そう言って宇佐美くんが笑う。
「…私で良ければ話くらい聞いたのに」
頼りにはならないかもしれないけど、私だって先輩なんだし、後輩の悩みくらいいくらでも聞いてあげるのに。
そんな思いを込めて小さくそう呟く。
すると。
「せんぱいのことで悩んでたって言っても同じこと言えますか?」