宇佐美くんの口封じ





宇佐美くんは急に私の頬を両手で挟むと、顔を近づけてそう言った。
少し冷め始めていた顔の熱が再発する。



「わ、私…?」



私の方がよっぽど宇佐美くんに悩まされていると思うんだけど…?

私の場合は、悩まされているというより“振り回されている”と言った方が正しいかもしれない。






「なんで俺、せんぱいで満たされてんのかなーって」

「…はい?」

「今までは女の子とイイコトして満たされてたのに、せんぱいとは一緒にいるだけで充分っていうか。それ、なんでなのかなってずっと考えてたんですよね」





そういう宇佐美くんの言葉を、私はどう捉えたらよいのだろう。




身体の関係がなくても仲良くできてることを素直に喜んでいいのだろうか。

それとも、一緒にいるだけで充分っていうのは、私に女としての魅力がないから?



…まただ。私の知らないもやもやが襲ってきた。



< 90 / 234 >

この作品をシェア

pagetop