宇佐美くんの口封じ
なかなか納得できないでいる私に、リコはため息をついた。
「後輩くんがどう思ってるとかは知らないけどさ。雅はその子のことどう思ってんのよ?」
「どうって…良い人だとは思うけど、」
「そういうんじゃなくて。…好きなんじゃないの?他の子と一緒になりたくないって思うくらいなんだから」
いつかの玲に言われた言葉を思い出す。
――『好きなら、泣かされる前に諦めたほうがいいです』
私は宇佐美くんに恋をしているのだろうか。
いや、それはやっぱり違うような気もするんだけどなぁ。
そもそも恋がどんなものなのか、経験値0の私にはなかなか想像できるものではなかった。
「…はぁ…雅って案外ピュアなのね」
「…ほめてんの?」
「どっちかというと貶してる。自分の気持ちくらい自分で自覚しな?」
リコはそれだけ言うと、「戻るかぁ」といつものテンションにもどり、だるそうに揃えた道具を持った。
リコの後に続き美術室を出る。