それからの日々

「……みどり、コーヒー淹れたで」

リビングから「彼」……洋史(ひろふみ)が声をかけた。

「ありがとう。もう、終わるから」

みどりは振り向くと、笑顔で答えた。
目尻に幾本かのシワが浮かぶ。

洋史も、その近寄りがたいほどの理知的な面立ちを綻ばせて肯く。
目尻には、みどりよりずっと深いシワが刻まれていた。

彼らは五十代になっていた。

< 11 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop