それからの日々
一方、「彼」の方も同じような人生だった。
幼い頃から、勉強して新しい知識をどんどん吸収していくのはちっとも苦にならず、むしろおもしろかった。受験勉強を勝ち抜いて名門と呼ばれる学校へ進むのも、ゲーム感覚で「クリア」していった。
容姿も悪くない方だしスポーツもそこそこできるから、女の子は向こうから勝手に告白してきた。
かわいい子だったら、どんな子なのかはよくわからなくても一応「OK」してつき合った。
のちに結婚することになる「妻」も、そんな中の一人だった。出会ったとき短大生だった彼女は美人で華やかで、友達に自慢できた。
そんな彼女と結婚したのは、避妊に失敗して妊娠させてしまったからだ。
だけど、当時一般職から総合職への試験を突破した彼女はキャリアウーマンの先駆けとして仕事に没頭していたし、自分たちはそういう「きっかけ」でもない限り、結婚することはないだろうと思っていた。
子育ては正直不安もあったが、生まれてきた子は自分にそっくりで、心からかわいいと思えた。