終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
「あ」
顔を向けるとあのデザイナーの子がリュックを抱きしめ立っている。
「えっと…榎本さん?帰らないんですか?」
壁にもたれたまま困ったようにゆっくり口を開いた。
「…傘、持ってきてなくて」
「あー」
警備室で傘の貸し出しはあるはずだけど…。
ギュッとリュックを抱きしめる手とふんわりとした髪が少し揺れるのに目を細める。
「良ければ送って行きましょうか。衣装、作らないといけないんですよね?」
「え…」
ビクッと震えた彼女は申し訳ないという表情…ではなく、嫌悪の表情を向けてくる。
笑みを保つが少し嫌な汗をかいてきた。
俺嫌われてる?
「どうしますか?僕は全然かまいませんが」
笑顔だ笑顔。
笑ってればなんとかなる。
「…すみません、お願いします」
とても嫌そうに彼女は頭を下げた。