終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
撮影は順調に進み予定通り終わった。
楽屋で着替え脱いだ衣装を彼女がカバンにおさめる。
この仕事はこれにて終了。
もう彼女に会うことはない。
それが、なんかちょっと嫌だったのかもしれない。
「ありがとうございました。またご一緒することはあると思うのでその時はよろしくお願いします」
いつも通りの挨拶をすましても楽屋から出る足取りが重い。
「こちらこそ、ありがとうございました」
彼女はなんとも思ってないようにペコッと頭を下げて片付けをしている。
まあ、得意先だし、また会えるか。
あまりにも俺に無関心なことにホロリと涙を浮かべドアノブに手を伸ばした時、ちょうどラピスラズリのもう1人のデザイナーが入ってきた。
「失礼し…わ、白川さん。ごめんなさい」
ぶつかりそうになった俺に謝ると片付けをしている彼女に声をかける。
「結ちゃん。今日は直帰でいいからついでに送るね」
「いえ、大丈夫です。片付けもまだ残ってるし私も会社に帰ります」
「かすみさん命令なの。結ちゃん、仕事に没頭すると夜遅くなっちゃうでしょ?またアイツが出たら危ないし会社の近くに引っ越すまではさ」
「でも、私の家会社と反対方向なので申し訳ないです」
「あの」
帰るに帰れなくなり隅っこで2人の会話を眺めていた俺に視線が集まる。
「なら僕が送りましょうか?」
「え?」
「車じゃないけど、男ですし女性が送るより安全だと思いますけど」
俺の言葉に彼女は怪訝な顔をし、もう1人のデザイナーは困った顔をした。
「そんな、白川さんに頼むなんて。それにこの後もお仕事なんじゃ」
「全然大丈夫ですよ。事務所と同じ方向だし、今日はマネージャーいないんでどうせタクシーで帰る予定でしたし」
渋る2人に「送りますよ」とにっこり笑い強引に事を運んだ。