終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
リュックを背負い不機嫌そうな彼女とスタジオを出る。
「さてと、ラピスラズリと反対方向ということは家はこっちですか?」
「そうですけど、タクシー使うんじゃないんですか?」
「いいえ?タクシーで帰るなんて僕言いました?」
「さっき言ってましたよ」
「アレはあくまで予定ですから。榎本さんと一緒なら歩いて帰ります」
再び怪訝そうな顔。
「僕のこと嫌いですか?」
「え?」
「初対面の時から僕と一緒にいるのが嫌そうなのでなんとなく」
そのまま彼女は黙ってしまった。
普通なら「嫌いではない」と答えるとこだけどそれもしないということは本当に嫌われてるのか。
「僕何かしました?」
少し悲しそうな顔をしてみせるが「白川さんが悪いわけじゃないので」としか言わない。
首を傾げて続きの言葉を待つが教えてはくれそうにないので話題を変えた。
「榎本さん、ストーカー被害にあってませんか?」
今までで一番の反応だった。
バッと俺の顔を見上げると目を見開いて立ち止る。
けどすぐいつもの落ち着きを取り戻した。
「察しがいいんですね」
「まあ、空気を読むのもこの仕事には必要なので」
「空気を読む?」
眉をひそめた彼女はまるで「あなたのどこが空気を読めているのか」という顔だ。
「榎本さん。『空気が読める』と『慣れ慣れしい』はまったく別物ですよ」
彼女の表情から考えを読み取った俺に驚く。
「…テレビの印象とは随分違う」
「何か?」
「なんでもないです…」