終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
本当はゆっくり話がしたくて歩きにしたけど仕方がなくタクシーを呼んだ。
15分ほどで彼女の自宅についた。
お世辞にも綺麗、とは言えない築数十年といったアパートだった。
セキュリティ的にも不安だ。
「白川さんまで降りなくても良かったんじゃないですか?」
「部屋に入るまでが『送る』でしょ?」
またその顔。
男に尽くされるのが嫌なのか?
部屋の前まで彼女についていく。
鍵を回しながら「もう大丈夫ですから」とドアを開きながら俺を振り返った彼女の顔がまた青ざめた。
まさかと思い視線の先へ振り返ると案の定見知らぬ男が立っていた。
どうやって追ってきたんだ?こっちは車だったのに。
彼女を庇うように前に立つ。
「結ちゃん、その男誰?」
ストーカーにしては普通、というか。
もっとこう気持ち悪い男を想像してた。
「まさか浮気?」
「浅井くんには関係ない」
やっぱ知り合いなのか。
浅井と呼ばれたストーカーは悲しそうに顔を歪めたままその場に立ち尽くす。
彼女も俺がいるからか部屋に入れずにいる。
確かに危害を加えてきそうな気配はないけど、分からないしこのままこうしていてもどうしようもない。
部屋のドアを開け、彼女の肩を抱いた。
「中入ろうか結」
「は?」
嫌そうにする彼女の顔を見られないように部屋に押し込む。
「結も迷惑してることだし、もう付きまとうのやめてもらえますか?文句があるなら彼氏の俺に直接お願いします」
そう言い捨て俺も部屋の中に入った。