終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
だからって…。
「いつからこんな生活してるんですか」
「専門に入ってからですけど」
「実家は地方ですか?」
「そうです、けど…なんでそんなこと聞くんですか?」
「なんで?なんでって、なんか気になって」
「助けてもらったのは感謝しますけど、興味本位で私の事情に首突っ込むのやめてもらえますか?迷惑ですし、巻き込みたくないんです」
そう言うと彼女は立ち上がり玄関へ向かった。
ドアスコープを除いている。
「もう帰ったみたいですよ」
振り返り俺を見遣る。
「嘘とはいえ私の彼氏だなんて言ったんです。その帽子とメガネでどこまで隠せたか分かりませんけどもし浅井くんが芸能人の白川律兎だって気付いてて危害を加えることになってしまっても私責任取れません。だから、これ以上私に関わらないでください」
華奢な体にか細い声。
そんなこと言われたって、興味を持ってしまったんだからしょうがないだろ。
「じゃあ、その嘘を本物にすればいい」
「え?」
「俺が君の“彼氏“になればいい」
「何言ってるんですか?私、あなたと付き合う気ありません」
「俺も別に付き合う気はないよ。なんて言えばいい?その…契約みたいな感じ?」
彼女がピクッと反応する。
「…どういうことですか?」
「俺と君が契約して“恋人“になる。“契約“だからお互いに何かメリットを得られる。君のメリットは俺という彼氏の存在を男避けの材料にできることと、定住できる環境…かな?」
「定住できる環境?」
「人間らしい生活ができるように部屋を用意する。こんなボロアパートじゃないセキュリティのしっかりした場所をね」
やっぱり。
こんな環境での生活に不満がないわけじゃない。
彼女の表情が少し緩んだ。
「…白川さんのメリットは?」
「もちろん。君とイチャイチャできる権利」
表情がまた強張った。
「無理強いはしないよ。こうやって一緒にいるだけでも目の保養になるから満足。でもやっぱ、触れたいって思う」
立ち上がり彼女に詰め寄る。
彼女の肩に力が入ったのが分かった。
「好きでもない男に抱かれるのは嫌?本当に付き合うわけじゃないし、抵抗がある?」
真っ直ぐ俺の目を見つめてそらさない。
その目も結構グッとくる。
「どう?契約、してみる?」