終わり良ければ全て良し、けど過程も大事





「さっきの何?」


彼女を見送り、社長室に戻る社長を追いかけながら少し声のトーンが低くなる。


「何が?」

「体を売るって…俺そんなつもりで結に契約持ちかけたわけじゃないんだけど」

「じゃあ何?お人形さんみたいにただ自分のテリトリーに置いておきたかったとか言わないわよね。やることはやるつもりだったんでしょ?」

「それは…そうだけど」

「なら同じことじゃない。『嫌がることはしないけど同意の上でエッチさせてね』なんて(てい)のいい脅しよ。その顔じゃなかったら今頃性犯罪者だからね」


性犯罪者って…。



「じゃあ社長はいいの?橘プロの白川律兎が契約で女を囲ってるなんて一面大スクープじゃん。バレたらどうなるか」

「じゃあ本当に付き合っちゃえば?遊びは揉み消すけど真剣交際は口出さないわよ」

「なんでそうなるの。別に結と付き合いたいわけじゃないって」


吐き捨てるように言うと社長はピタッと立ち止まりものすごい顔で振り向いた。


「え…ねぇ、あんた結ちゃんでもそういう気にならないの?」

「そういう気って?」

「だから、付き合いたいなとか、そういう気よ。てっきり私は結ちゃんのこと好きになったものの今まで遊んでばかりだったから素直になれず“契約”なんて少女漫画みたいなこと言い出したんだと思ったから背中押してあげたのに」


は?という顔で社長を見る。


「俺もそう思ってました。だって結さんを見る律兎さんすごく優しい顔してたし」


チュー多の言葉に社長がうなずく。


「気付いてないだけで恋してるのよ。ほら、結ちゃんのこと考えてみて?キュンキュンしない?律兎、それが恋よ?」

「しねぇよ。第一顔はいいけど性格に難ありだから。根暗っぽいし、話続かない」


社長とチュー多が顔を見合わせて頭を抱えた。



「ねぇ…なんでそんな風にしか言えないの?ホント最低よ律兎」

「そうっすよ律兎さん。それただの陰口じゃないっすか」


「いや待って、なんで俺が悪いみたいになってんの。言っとくけど結も俺のこと全く興味ないよ?つーか、なんか嫌われてる気さえするし。嘘のカップルなんだから別にお互いをどう評価しようが自由じゃん」


そうだよ、そう…なんか俺嫌われてるんだよ。

あれ、なんで嫌われてるんだろう。

というか、嫌いなのになんでこんな契約するんだ?


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