終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
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契約書
橘プロダクションは榎本結に対し弊社所有住居の一室を無償で与える。
契約の破棄について
・弊社都合の場合、また榎本結が下記の条件に従わない場合、榎本結の指定する日数猶予を与え退室してもらう。
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事務所の一室で社長、俺、結が契約書にサインをする。
「はい、じゃあこれで完了ね。あとの細かいとこは2人で話し合って、決めて、この契約書のここに記入して」
まるで小さな子供に教えるように1つ1つ指を差しながら社長は説明する。
「お互いで1枚ずつ保管しておいて。事務所には提出しなくていいから」
「え、いいの?」
「いいわよ。プライベートな部分だし、そこまで把握しておく必要はないから。ただし、何かあった時はすぐ見せてもらうからそのつもりで」
3部ある契約書のうちの1部をファイルに閉じて社長は部屋から出ていった。
2人で決める細かい部分…契約書の“下記の条件”の部分だ。
つまり、2人が恋人として接する上でのルール。
「じゃあささっと決めようか。買い物も行かないといけないし」
「買い物?」
「家具とか家電とか、買いに行くんでしょ?付き合うよ。というか、金ある?」
一瞬口を開きかけてすぐ閉じた結はハッとして口を開いた。
「出してくれるんですか?」
「うん。それぐらいはするよ」
「でも、部屋も用意してくれたのにそんなことまでしてもらうなんて」
「…不公平?」
「…そうです」
ため息をつき手元の契約書に視線を落とした。
結はなんというか、ものすごく真面目だ。
もらえるものは素直に受け取ればいいのに必ずギブアンドテイクの精神。
女の子なんだし、これだけ可愛いんだからにっこり笑って「ありがとうございます」って言ってれば人生イージーモードだろうに。