終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
「部屋の鍵って…ここのことですか?」
1枚のドアを見つめながら結の顔が青ざめていく。
2人が出し合ったルールを正式に契約書に書き込んだ。
3つ目の条件の「部屋の鍵をかけない」の部分が結には理解できず問い詰められたが見た方が早いからと事務所が用意した部屋にやってきたのだ。
用意したのは2LDKの部屋だ。
ただ、一般的な部屋と違いリビングに隣の部屋へ通ずる1枚のドアが設置してある。
「ちなみにこっちは俺の部屋ね」
ドアを開いた先は結の部屋をそっくりそのまま反対の間取りにした部屋。
「このマンション、一部の部屋が2つで1セットでさ、タレントとマネージャーとかコンビの相方ととかで住むんだよ。いちいち玄関通らなくてもいいでしょ?あとそうだな、恋人とか」
最後の言葉に結が何かを察したようだった。
「玄関通ったらどこからカメラマンが狙ってるか分からないから都合いいんだよね。防音だからここのドア閉めちゃえばプライベートも問題ないし」
「でも、鍵はかけないんですよね」
「そう。だから会いたい時はいつでも会えるってこと」
「プライベートの配慮ってありましたけど、これでどう配慮するんですか?」
「それもちゃんと考えてる。ほらこれ」
ドアに埋め込まれた小さな小窓を開くとガラスで仕切られた空間。
「俺が結の部屋に入る時は必ずこの小窓を確認する。だからここにこのプレートを挟んでおいて。例えばお風呂に入ってる時はこれ『入浴中』のプレートね。何個か用意してるから好きなの書いていいよ」
数枚のプレートを渡すと結は納得したようだった。
「ただし考えて入れてね。いつもいつも拒否するようなプレート入れてたら契約違反だし。あとプレート変え忘れることもあるだろうからプレート入ってても連絡することはあるから。返事なかったら無理には入らないけど」
「分かりました」
「じゃあ買い物行こうか。早く生活環境整えたいでしょ」
「え、あの」
玄関へ向かう俺を困った顔で引き止める。
「…プレゼントだから気にしなくていいよ。何もいらないし」
「そうじゃなくて、一緒に買いに行くんですか?」
「そのつもりだけど、何?嫌?」
「だって、撮られたらどうするんですか?。必要以上に外で会わない方がいいと思います」
「俺は別にかまわないけど」
社長がなんとかしてくれるだろうし。