終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
頼られなかったことに苛立つ。
俺の立場を考えてくれてのことだろうがそれにしても一緒に出かけたくないというのもショックは大きい。
俺、やっぱ嫌われてんのかな…。
そう思うも、すやすやと気持ち良さそうな結の顔があまりに可愛くて無意識に手が伸びる。
頬に触れ、柔らかなそれが俺の手で形を変えるほどするとさすがに目を覚ました。
「…おはよ、結」
俺と目が合うもゆっくりと瞬きを繰り返している。
「…白川さん?」
寝ぼけていたのかようやく俺だと認識したようだ。
「どこで寝てんだよ。体痛いだろ」
「…床で寝るのは慣れてるので平気です」
のそのそと起き上がり近くにあった眼鏡をかける。
うわ…可愛い子って寝起きでも顔崩れないんだな。
女優やモデルのいわゆる世間一般的に美女と評される女の寝起きを何度も見てきたがその中でもダントツだった。
「…なんでいるんですか?プレート入れてたと思うんですけど」
寝起きからなかなか冷たい。
「ごめん。ちゃんと荷物運べたか心配で。連絡なかったしチュー太も使わなかったみたいだから」
「1人で大丈夫って言ったはずですけど」
「そうだけど…。持ってきたのこれだけ?」
キャリーケースと結がくるまっていた毛布に触れる。
「はい、他のものは全て処分しました」
「布団捨てたの?」
「持ってこれなかったので」
だからチュー多使えって言ったのに。
「安物なのでいいんです。また買えばいいだけですし、それぐらいの蓄えはあります」
淡々と語る。
まあ余計なもの何も持ってなさそうだし、ミニマリスト?的な?
いつでもストーカーから逃げられるように、身軽でいるために、キャリーケースに入るだけの荷物と毛布だけで生活できる21歳の女の子。
ここまでの人生で一冊本が書けるんじゃないかと思うぐらい惨めな気持ちになる。