終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
こんなもんか。
料理しないって言ってたし、後は必要になったら買い足せばいい。
最悪俺の部屋にも前の家から持ってきた家電があるからそれ使えばいい。
「結、あと何か欲しいもの…結?」
振り返った先に結の姿がない。
意見を無視して勝手にすすんでいたからか途中から結がいないことに気付いてなかった。
慌てて来た道を戻ると、調理家電コーナーで1点を見つめ微動だにしない結を見つけた。
「結、ちゃんとついて…っ」
近づいて覗き込んだ結の顔を見て言葉に詰まる。
さっきまでの不機嫌そうな顔じゃなく、嬉しそうに目を輝かせた表情。
…可愛い。
さっきまでの煩わしさなど一瞬で吹き飛び、さっきまでの結の態度も一瞬で許せてしまった。
ハッと我にかえり、結の目線の先を見る。
炊飯器?いや、ただの炊飯器じゃない…喋る炊飯器?
ゴテゴテとPOPで飾られている。
『あの大人気声優、右海侑斗の声を収録!その数およそ300パターン!!』
『あのキャラクターの声で喋ってくれる!?』
…なんだこれ。
ボタンを押すたび、炊けるたび、この右海侑斗っていう声優が喋ってくれる炊飯器らしい。
パターンの例もPOPで貼り付けてある。
『炊けたよ、一緒に食べよ?』
『お粥を選択しました。…あれ、調子でも悪い?』
…は?
パターンの例を読むたび顔が引きつっていく。
というか、高っっ!
性能的にはおよそ2万ぐらいなのに、表示価格7万円。
まあ、声優ブームってあったし、こういうのも商売か。
ジャンルは違えど同じ土俵にいるから分からなくもない。