終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
帰りの車の中、声優ボイス付きの炊飯器だけを大事そうに抱え、上機嫌な結。
開封が待ちきれないのか箱に書いてある説明書きを必死に読み込んでいる。
「…車の中で文字なんか読んだら酔うよ」
無視してるのか、俺の声が聞こえてないのかそれをやめない。
「…そいつが好きなの?」
「え?」
夢中になっていて聞こえてなかったみたいだ。
ようやく俺の声が届いたらしい。
「それ、右海侑斗って声優が好きなんだ。有名?俺が見るようなアニメにも出てる?」
ちょうど信号待ちで、ハンドルから手を離し箱に記載されている名前をコンコンと叩く。
「…知らないんですか?」
信じられないという表情を向けてくる。
いや、知らん。
「アニメは見なくはないけど声優とかいちいち気にしないし。聞いたことある名前だから有名なんだろうけど知らない」
そんな、常識でしょ?みたいな顔されても困る。
「…別に、声優さんに興味があるとかないとか、そういうの関係ないと思うんですけど」
そんな、国民的声優ですよ?みたいな顔されても困るって。
アイドルに興味なくてもグループ名は知ってるとか、スポーツに興味なくても金メダリストの名前ぐらい知ってるとか、そういうのと同じレベルで言われても分からないって。
「…花菱和臣」
聞き慣れた…というよりも言われ慣れた名前を結が口にする。
「右海さんは、和臣さんの声を担当してました。アニメは見てないんですね」
点と点が繋がる。