終わり良ければ全て良し、けど過程も大事



肩を落とす雪さんにおそるおそる口を開く。

「あ、の…1つ質問なんですけど…女の人ってどれだけ顔が良くていい男で地位とか財力とかあっても好きじゃない相手に迫られたら嫌、ですか?」


笑顔を浮かべていた雪さんの表情が固まり一瞬で口角が下がった。


「無理やり迫ったの?」

「や、いや、無理やり…じゃ、ない…と思ってるんですけど…」


この流れじゃ自分のことだと言ってるようなものだし別にそれを気付かれることを恐れてたわけじゃないけどあまりにもストレートな返しにどもる。


「え。まさか最後までしてないよね?」

「してないです!というか、その気にさせたくて予約というか…今度は最後までする、的な感じでちょっと触っただけ、というか…」

「それで拒否られたからショックで今日ずっと上の空だったの?」


この人はいつも察しがいいんだ。

というか良すぎる。


「律兎くんでも女の子に拒否られることあるんだね~というか、それでショック受けることにびっくり」

顔は笑ってるけどちょっと距離を置かれたのは気のせいだろうか。


「というか自分で顔が良くていい男で地位も財力もあるってどうかと思うけど。安い少女漫画の我がままな御曹司?」

「すみません。俺が悪かったです。それ以上は勘弁してください」

いたたまれなくなり項垂れる。


「ごめんごめん、ちょっとからかっただけ。そうだな…嫌か嫌じゃないかって言われたら嫌じゃないんじゃないかな。確かに律兎くんみたいな男の人に迫られたら大抵の女の子はドキドキしちゃうと思うけど…あ、あくまで無理強いじゃない場合だよ?」

希望が見えてバッと顔をあげる。

けど、まだ続きがあった。


「でもね、だからって受け入れるっていうのは話が別だから」

「え?」

「人それぞれ気持ちは違うから、みんな同じかは分からないけど。例えば、律兎くんのファンだったら例え好きな人がいても彼氏や旦那さんがいても1度だけでも抱かれたいって思う人はいると思うよ。でも、いくら顔が良くていい男でも興味もなんにもない人に迫られるのはただただ気持ち悪いだけだと思う」

気持ち悪いだけ。


雪さんのその言葉が頭の中で永遠と繰り返された。


< 52 / 77 >

この作品をシェア

pagetop