もういいや...と思ってた
"ピピピピ"

体温計が鳴り、素直に渡す。

龍斗「うん、大丈夫だね。じゃあ、午後からは少し理学療法室しくからその時迎えに来るね」

「...あ、はい」

龍斗「あれ、聴診してないよね」

「...しましたよ」

龍斗「俺回診前は首に聴診器かけて、聞き終わったあとはポケットに入れるっていう習慣があるから、やってないね。昨日の今日でまだそんな態度でいるのか?」

多分昨日のことは大翔先生から伝わっているのだろう。入ってきた時からそんなに怒ってる雰囲気はなかった。だから私が聴診バックれようとしたことで少し怒り出したんだと思う。

「ごめんなさい」

と言って、少し服を捲ると、また医者の真剣な目になり、聴診器を当てる。龍斗先生はとにっかく聴診が長い。じっくり聞いているのか他の人は1呼吸聴いたら次の場所を当てるのだが、龍斗先生は2、3回同じ場所の呼吸を聴取する。長い聴診が終わると

龍斗「うん、戻していいよ。じゃあ今度こそ、診察終わったから、また午後来るね?」

そう言って、聴診の結果は何も言わずに出ていった。良かったら言うだろうからあんまり良くなかったのかな...。治ることはあるのかな...。なんて悶々と考えていた。
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