傘を差して雨宿り
『直接話しかけるの、恥ずかしいからです』
と莉帆は打った。

 口に出すのなら、そんなこと言うこと自体が恥ずかしい気がするのだが。

 LINEだと気にならなかった。

『お前は隣の部署の新入社員だな』

『はい。
 平賀莉帆です。

 よろしくお願いします』

 なにをよろしくなんだかわからないが、とりあえず、よろしくしてみた。

『俺のことはいいから、さっさと帰れ』
と打って来た蒼羽だったが。

 ちょっと西の空を見、
『いや、もうちょっとでやむだろうから、このまま此処に居ろ』
と打ち足してきた。

 ……此処に居ろとか困るんですが。

 緊張してしまうではないですか。

 っていうか、なんだか、
『俺の側に居ろ』
 って言われたみたいで、どきりとしてしまうんですが。

 いや、蒼羽はそんなこと、ひとっことも言ってはいないのだが、莉帆は、ひとり緊張して固まってしまっていた。
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