傘を差して雨宿り
あの新入社員は、なんで、雨の中立ち尽くしてんだ?
そう思いながら、満島蒼羽は莉帆を眺めていた。
風邪ひくだろうが。
早く帰れ。
――と思い、見つめていた。
その視線が莉帆をフリーズさせているとも気づかずに。
声をかけようかと思ったが、そこでやさしく、
「なにしてるんだ。
濡れるじゃないか。
早く帰れ」
とか言うようなガラではない。
そもそも名前が思い出せないんだが。
なんて言ったかな、あの子。
可愛いけど、ぼんやりしてるとみんなが言ってた。
えーと……? と思って莉帆を見つめていると、いきなり莉帆がこちらに向かい、歩いてきた。