傘を差して雨宿り
 配られたお知らせの紙に書いてあった電話番号を、歓迎会に遅れたときのために、とりあえず、入れておいたのだ。

 しかし、そこで莉帆は、真横に居るのにかけるのもな~と至極当たり前のことに気がついた。

 蒼羽の立っている位置は結構近く。
 濡れたスーツが体温で温まり、上がる蒸気までが感じられる気がして、緊張する。

 やばい。
 早くしなければっ。

 そして、また、あっ、そうだ、と気づいた莉帆はLINEを開けてみた。

 死の危険に際して、なんとか助かる方法はないかと思い、過去の記憶を検索するために走馬灯がよぎるというが。

 そんな感じに、次々と過去の記憶が蘇り、頭が回った。

 いや、普通に蒼羽に話しかければ、走馬灯がよぎらなくてもよかったのだが、その勇気は今のところない。

 やはり……と莉帆はそのスマホの画面を見つめた。

 スマホのアドレス帳に電話番号が入っているせいで、知り合いかも? のところにそれらしき名前がある。
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