色なき世界でキミは笑う
『…危ないッ!!』
夢の中と現実で、そう叫びながら空中に手を伸ばし、ベッドから飛び起きた。
僕の名前は吉野翔太。
今日から、高校2年生。
そんな大事な節目の日なのに、悪夢で飛び起きるなんて、最悪だ。どんな夢だったかは…覚えてないが。
そのせいで、いつもは予鈴5分前に着くように登校しているのだが、今日はいつもより1時間早く起きてしまったので、なんとなく、歩いて学校に行くことにした。
(…なんだか、今日の夢もこんな感じだったような…)
そんなことないな、もしそうだったとしても、たかが夢の話だ。
そう自分に言い聞かせながら、家を出た。
家を出てから小道を通り、すぐの場所にある大通りの信号を渡り、そこから15分ほど歩いたところに、僕の通う高校がある。
「新しいクラス、どんな人がいるかなぁ…」
期待と不安を抱えながら歩いていると、いつもと違う大通りの景色に、違和感を覚えた。信号待ちで止まった状態で、その理由を考える。
(あ、いつもの時間なら、学生でわんさかしている信号待ちなのに、早い時間だとこんなに人いないんだ…)
らしき答えを見つけたつもりだが、頭の中で違和感、モヤモヤは消えないでいる。
初めての感覚で、気持ち悪いなぁと頭をかいていると、ふと、赤信号なのに僕と同じ側から横断歩道を渡ろうとしている女子生徒が目に入った。
(…なんだ、信号無視か?まぁ、もうすぐ青になるだろうけど…せっかちな人だなぁ)
そう心の中で、少しだけ文句を言った。
(…?)
なぜか分からないけど、頭の中でモヤモヤが濃くなる。
いや、知らない女子だ。名前も知らないし、喋ったこともないし、僕は何も関係ない。どうしてだ…?
そのとき、忘れていたはずの、今日の夢を思い出した。
目の前に広がる同じ光景、そして違和感。
(…待てよ、この後、確か夢では…!)
そう思ったときには、もう僕の身体は動いていた。
「…危ないッ!!」
歩行者信号が青になった瞬間、ガシッ、と、横断歩道を渡り始めていた女子生徒の左腕を掴む。
驚いて振り返った彼女と目が合う。
その1秒、2秒、いや3秒後に、彼女の目の前を、信号無視したトラックが、物凄いスピードで通り過ぎた。
(…危なかった…そうだ、夢ではこの子…轢かれて…)
思い出したくない夢の続きを思い出してしまって、後悔した。
「…あ、えっと…ありがとう…」
その声で我に返る。やばい、腕、掴んだままだった。
あわてて離して、とにかく謝る。
「ご、ごめん!突然引っ張ったりなんかして!驚かせちゃったよね!ほんとにごめん!!」
僕には謝る事しかできない。だって、咄嗟に腕を引っ張ったのは、今朝の夢で君がトラックに轢かれていたから、なんて、口が裂けても言えない。
「ううん、君が助けてくれなかったら、私、きっと撥ねられてたよ。本当にありがとう」
その女の子は、ニコッと微笑んで、また僕にお礼を言った。
自慢じゃないけど、僕は女子と滅多に目を合わせない。いや、合わせられない、が正解だ。
僕の母さんは、僕が3歳の頃に亡くなった。
それ以来、父が兄1人、弟1人の男3人兄弟を、男手一つで育ててくれて、家には男しかいなかったし、
遊ぶ時は大体、幼なじみの今井 龍太郎としか遊んでこなかったから、女子に対する免疫が、僕にはまるでない。
そんな僕だが、今、女子と目が合ってしまっている。
突然の出来事に、顔を赤くして固まった僕を見て、女子生徒はクスッと笑って、
「私、佐倉のの花です、君も今日から2年生だよね、クラス替え、楽しみだね!じゃ!」
そう言って手を振り、彼女は点滅し始めた青信号を急いで渡って行った。
「同じクラス、だといいな…」
誰が、とは言わないけれど、そのときは無意識に、彼女の笑顔を思い浮かべた自分がいたが、僕は気づかないフリをした。
夢の中と現実で、そう叫びながら空中に手を伸ばし、ベッドから飛び起きた。
僕の名前は吉野翔太。
今日から、高校2年生。
そんな大事な節目の日なのに、悪夢で飛び起きるなんて、最悪だ。どんな夢だったかは…覚えてないが。
そのせいで、いつもは予鈴5分前に着くように登校しているのだが、今日はいつもより1時間早く起きてしまったので、なんとなく、歩いて学校に行くことにした。
(…なんだか、今日の夢もこんな感じだったような…)
そんなことないな、もしそうだったとしても、たかが夢の話だ。
そう自分に言い聞かせながら、家を出た。
家を出てから小道を通り、すぐの場所にある大通りの信号を渡り、そこから15分ほど歩いたところに、僕の通う高校がある。
「新しいクラス、どんな人がいるかなぁ…」
期待と不安を抱えながら歩いていると、いつもと違う大通りの景色に、違和感を覚えた。信号待ちで止まった状態で、その理由を考える。
(あ、いつもの時間なら、学生でわんさかしている信号待ちなのに、早い時間だとこんなに人いないんだ…)
らしき答えを見つけたつもりだが、頭の中で違和感、モヤモヤは消えないでいる。
初めての感覚で、気持ち悪いなぁと頭をかいていると、ふと、赤信号なのに僕と同じ側から横断歩道を渡ろうとしている女子生徒が目に入った。
(…なんだ、信号無視か?まぁ、もうすぐ青になるだろうけど…せっかちな人だなぁ)
そう心の中で、少しだけ文句を言った。
(…?)
なぜか分からないけど、頭の中でモヤモヤが濃くなる。
いや、知らない女子だ。名前も知らないし、喋ったこともないし、僕は何も関係ない。どうしてだ…?
そのとき、忘れていたはずの、今日の夢を思い出した。
目の前に広がる同じ光景、そして違和感。
(…待てよ、この後、確か夢では…!)
そう思ったときには、もう僕の身体は動いていた。
「…危ないッ!!」
歩行者信号が青になった瞬間、ガシッ、と、横断歩道を渡り始めていた女子生徒の左腕を掴む。
驚いて振り返った彼女と目が合う。
その1秒、2秒、いや3秒後に、彼女の目の前を、信号無視したトラックが、物凄いスピードで通り過ぎた。
(…危なかった…そうだ、夢ではこの子…轢かれて…)
思い出したくない夢の続きを思い出してしまって、後悔した。
「…あ、えっと…ありがとう…」
その声で我に返る。やばい、腕、掴んだままだった。
あわてて離して、とにかく謝る。
「ご、ごめん!突然引っ張ったりなんかして!驚かせちゃったよね!ほんとにごめん!!」
僕には謝る事しかできない。だって、咄嗟に腕を引っ張ったのは、今朝の夢で君がトラックに轢かれていたから、なんて、口が裂けても言えない。
「ううん、君が助けてくれなかったら、私、きっと撥ねられてたよ。本当にありがとう」
その女の子は、ニコッと微笑んで、また僕にお礼を言った。
自慢じゃないけど、僕は女子と滅多に目を合わせない。いや、合わせられない、が正解だ。
僕の母さんは、僕が3歳の頃に亡くなった。
それ以来、父が兄1人、弟1人の男3人兄弟を、男手一つで育ててくれて、家には男しかいなかったし、
遊ぶ時は大体、幼なじみの今井 龍太郎としか遊んでこなかったから、女子に対する免疫が、僕にはまるでない。
そんな僕だが、今、女子と目が合ってしまっている。
突然の出来事に、顔を赤くして固まった僕を見て、女子生徒はクスッと笑って、
「私、佐倉のの花です、君も今日から2年生だよね、クラス替え、楽しみだね!じゃ!」
そう言って手を振り、彼女は点滅し始めた青信号を急いで渡って行った。
「同じクラス、だといいな…」
誰が、とは言わないけれど、そのときは無意識に、彼女の笑顔を思い浮かべた自分がいたが、僕は気づかないフリをした。