青の果てへと泳ぐきみへ
わたしの人魚姫
 



ずっと会いたいひとがいる。
焦がれてやまないひとがいる。

だからわたしはこの季節になるとここへ来て、

“彼女”の帰りを、待っている。






「ん〜!きもち〜い!!」


両手を伸ばし風を全身に受けながら見渡すのは、一面を覆い波打つ、深く澄んだ青。

空は快晴。雲なんてひとかけらもない。
高校の終業式が終わってすぐに自転車を飛ばして来た甲斐があった。
絶好の海水浴日和だ。
今日こそはあのひとに会えそう気がする!


「……あーあ今年も楽しい夏休みがやって来た……」

「やって来たね!!」

「せっかく海に来たのに泳ぎもしないでただひたすら海面を眺め続けるこのあほみたいな耐久レースな……」


宝石を溶かしたみたいに青く輝く海をぐるりと一望できるこの小さな岬は、この町でいちばん美しく、静かな場所。

今この時間、わたしたち以外には誰もいない。
わたしたちと海を隔てるものは何もない。

……これ以上ないほどの特等席にいるというのに、わたしの隣にはいつも、退屈そうにため息を吐く男が約一名。


 
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