青の果てへと泳ぐきみへ
…….ああ、いつもそうだ。
いつだって七瀬のこの手に、ひどく安心する。
「そういえばあの日もこんな感じの日だったなあ」
「ん?」
「雲ひとつなくいい天気で。風もそんなに強くなくて。海からの光を反射するみたいにね、ちょうどこの辺りも……」
いつになく優しい七瀬になんだか気分が良くなって。
わたしは靴を履いたまま、足元から海へと続く岩場にゆっくり降りてみた。
遠くで見ても近くで見ても、撫でてみても叩いてみても、何の変哲もないただの黒い岩だ。……でもわたしは、10年前に一度だけ見たあの光景を忘れない。
あの夏の日。
わたしがこの岬へ来た理由。
空と海の深い青と、風が優しく撫でる緑に映える、小さな灯台の白。
その直下に伸びるゴツゴツとした岩壁に、星が瞬くように、何かが無数にきらめいているように見えて――