青の果てへと泳ぐきみへ
◇
再び目を開けた時、わたしは硬い岩の上に横たわっていた。
体を起こし、辺りを見渡す。
日が落ちかけた空。すぐ頭上に佇む白い灯台。
凪いだ海は少し色を濃くし、遠くから海鳥の声が聴こえてくる。
ぐっしょりと濡れた制服のまま寝ていたのは、慣れ親しんだ岬の先端にある岩場だった。
……なんだか、長い夢を見ていたみたいだ。
頭がぼうっとして、上手く回らない。
わたしはこんなところで何をしているんだろう。
「七瀬、……」
回らない頭で必死に記憶を手繰り寄せ、昼間まで一緒にいたはずの友人の名前を呼ぶ。
しゃがれてか細くなった声が、静かな海に弱々しく響いて消えていく。
「七瀬、どこ……?」
返事はない。
声が小さすぎて、聞こえないのかもしれない。
もしくは、もう帰ってしまったのかも。
ぱしゃ、と足元で岩に当たった海水が跳ね、びくりと大袈裟なくらいに肩が震える。
「ななせ……」
水に触れないよう足を少し体の方に引こうとしたけれど、力が入らない。
波があるわけじゃない。
風もあまり吹いていない。
こんなに穏やかなのに。
……ああやっぱり彼がいないと、
わたしは海がこわい。