青の果てへと泳ぐきみへ
 






再び目を開けた時、わたしは硬い岩の上に横たわっていた。

体を起こし、辺りを見渡す。
日が落ちかけた空。すぐ頭上に佇む白い灯台。
凪いだ海は少し色を濃くし、遠くから海鳥の声が聴こえてくる。

ぐっしょりと濡れた制服のまま寝ていたのは、慣れ親しんだ岬の先端にある岩場だった。


……なんだか、長い夢を見ていたみたいだ。

頭がぼうっとして、上手く回らない。

わたしはこんなところで何をしているんだろう。


「七瀬、……」


回らない頭で必死に記憶を手繰り寄せ、昼間まで一緒にいたはずの友人の名前を呼ぶ。

しゃがれてか細くなった声が、静かな海に弱々しく響いて消えていく。


「七瀬、どこ……?」


返事はない。
声が小さすぎて、聞こえないのかもしれない。
もしくは、もう帰ってしまったのかも。

ぱしゃ、と足元で岩に当たった海水が跳ね、びくりと大袈裟なくらいに肩が震える。

「ななせ……」

水に触れないよう足を少し体の方に引こうとしたけれど、力が入らない。

波があるわけじゃない。
風もあまり吹いていない。
こんなに穏やかなのに。


……ああやっぱり彼がいないと、

わたしは海がこわい。


 
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